今でもあるかもしれませんが、60~70年代にかけて「ブラス・ロック」という音楽ジャンルがありました。名称の通り管楽器をメインにしたロックバンドの音楽です。
代表的なのはシカゴ、BST(Blood, Sweat & Tears)、チェイス、アイズ・オブ・マーチなどです。シカゴやBSTはヒット曲も多く長く続いたバンドですが、チェイスやアイズ・オブ・マーチに関しては短命だった印象です。
アイズ・オブ・マーチはいわゆる一発屋と言ってもいいでしょう。「ビークル」が大ヒットしましたが、それ以外の曲はあまり知られていません。
チェイスは人気がありましたが、文字通り短命でバンドメンバーのほとんどが飛行機事故で亡くなっています。「オープン・アップ・ワイド」や「黒い炎」に代表されるように、ハイトーンのトランペットに特徴があります。チェイスの人気のせいで、ハイトーンが吹けないトランペッターのニーズが減ったとさえ言われています。
当時、飛行機事故で亡くなるミュージシャンは多く、バディ・ホリーやジム・クローチ、ジョン・デンバーなども飛行機事故で亡くなっています。当時の自家用機はセスナなどの小型機がほとんどで、故障も多かったのかもしれません。時代が違っていれば防げたのかと思うと残念でなりません。
1960年代後半から1970年代にかけて全盛期を迎えたブラス・ロックは、シカゴや
過去の遺産の再評価とデジタル・リバイバル
近年の大きな特徴の一つが、70〜80年代のジャパニーズ・シティポップやフュージョン、そしてブラス・ロックに対する世界的な再評価の波です。YouTubeやストリーミングサービスを介して国境や世代の垣根が取り払われた結果、当時の尖ったアレンジや分厚いホーンセクションの魅力が、現代の若いリスナーやトラックメイカーたちに「新鮮なサウンド」として発見されました。韓国のプロデューサー兼アーティストであるNight Tempoが日本の往年のブラス・ロックバンドの楽曲をリメイク・現代風に昇華させる企画が話題を集めるなど、レトロでありながら先鋭的なグルーヴとして現代のクラブシーンやプレイリスト文化に接続されています。
現代のインディー・シーンやファンクとの融合
現代のブラス・ロックや管楽器を主体としたバンド群は、かつてのプログレッシブな大編成ロックの枠にとどまらず、ヒップホップ、R&B、ファンク、さらにはEDMの要素を貪欲に吸収しています。海外のストリート発のブラスバンドや、日本国内の「在日ファンク」などに代表されるように、タイトなリズム隊と爆発的なホーンセクションが一体となり、ジャンルの境界線を軽々と越えたオーガニックかつアグレッシブなライブパフォーマンスが支持されています。単なる懐古趣味ではなく、現代の耳に心地よい重低音やグルーヴ感へとアップデートされているのが近年の大きな特徴です。
SNSと動画プラットフォームによる可視化
また、TikTokをはじめとするショート動画プラットフォームの普及も、ブラス・ロックの復権を後押ししています。圧倒的なテクニックを要する高速のユニゾンフレーズや、ライブの臨場感あふれるホーンのソロパートは、視覚的・聴覚的なインパクトが強く、短尺の動画コンテンツと非常に相性が良いからです。世界中のミュージシャンがカバー動画やコラボレーションを容易に行える環境が整ったことで、国や言語の壁を越えた緩やかなグローバル・コミュニティが形成され、現代のブラス・ロックシーンを下支えする原動力となっています。
