ジャズ・ミュージシャンで特に印象に残っている一人が、トゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)です。1950年代〜60年代から第一線で活躍し、日本でも高い人気を誇り「ハーモニカおじさん」の愛称でも親しまれました。彼は本格的なクロマチック・ハーモニカをジャズの世界へ持ち込んだパイオニア(開拓者)と言えるでしょう。
彼の奏でるハーモニカ、口笛、そしてジャズギターが1つのメロディーを同時に奏でるユニゾン演奏は、彼のスタイルを象徴する最大の魅力です。中でも代表曲である『ブルーゼット(Bluesette)』は、軽快なワルツのリズムに乗せたギターと口笛のユニゾンが印象的な名曲として広く知られています。
トゥーツはジャズの枠にとどまらず、幅広いジャンルのミュージシャンと共演しました。中でも個人的に大好きなのが、サイモン&ガーファンクルの解散後にポール・サイモンが1975年に発表したソロの名作アルバム『時の流れに(Still Crazy After All These Years)』での共演です。収録作『ナイト・ゲーム(Night Game)』で聴けるトゥーツの哀愁を帯びたハーモニカの音色は、楽曲の切ない世界観を見事に引き立てています。
さらに、彼の活動の幅広さを象徴するのが、1969年の映画『真夜中のカウボーイ』のテーマ曲です。切なく胸を打つあのハーモニカのメロディー(演奏)は、彼の代表作の一つとなっています。この映画で主演を務めたダスティン・ホフマンは、映画『卒業』でトップスターの仲間入りを果たしており、その『卒業』のテーマ曲や挿入歌をサイモン&ガーファンクルが担当していたという点でも、不思議な縁を感じさせますね。
また、トゥーツの演奏は日本のテレビCMでも広く親しまれました。東京ガスや大手ビール会社のCMなどで彼の温かい音色が流れたことがきっかけとなり、日本で親しみを込めて「ハーモニカおじさん」と呼ばれるようになりました。
補足:トゥーツ・シールマンスと共演した主なレジェンドたち
彼がいかにジャンルを超えて世界中のトップミュージシャンから引っ張りだこだったかが分かります。
ジャズ巨匠
クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)
ビル・エヴァンス(Bill Evans)
エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)
オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)
ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)
チャーリー・パーカー(Charlie Parker)
ポップス / ロック
ポール・サイモン(Paul Simon)
ジョン・レノン(John Lennon / ビートルズ初期にトゥーツのリッケンバッカーギターに影響を受けた逸話も有名)
ビリー・ジョエル(Billy Joel / 『Leave a Tender Moment Alone』でハーモニカを演奏)
スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)
ボサノバ / ブラジル音楽
アントニオ・カルロス・ジョビン(Antônio Carlos Jobim)
エリス・レジーナ(Elis Regina)
イヴァン・リンス(Ivan Lins)
※トゥーツ・シールマンスには及びませんが、ボサノバと口笛の音楽動画を作ったので興味のある方はご覧ください。

