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2026年10月8日木曜日

 ジャズ・ミュージシャンで特に印象に残っている一人が、トゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)です。1950年代〜60年代から第一線で活躍し、日本でも高い人気を誇り「ハーモニカおじさん」の愛称でも親しまれました。彼は本格的なクロマチック・ハーモニカをジャズの世界へ持ち込んだパイオニア(開拓者)と言えるでしょう。

彼の奏でるハーモニカ、口笛、そしてジャズギターが1つのメロディーを同時に奏でるユニゾン演奏は、彼のスタイルを象徴する最大の魅力です。中でも代表曲である『ブルーゼット(Bluesette)』は、軽快なワルツのリズムに乗せたギターと口笛のユニゾンが印象的な名曲として広く知られています。

トゥーツはジャズの枠にとどまらず、幅広いジャンルのミュージシャンと共演しました。中でも個人的に大好きなのが、サイモン&ガーファンクルの解散後にポール・サイモンが1975年に発表したソロの名作アルバム『時の流れに(Still Crazy After All These Years)』での共演です。収録作『ナイト・ゲーム(Night Game)』で聴けるトゥーツの哀愁を帯びたハーモニカの音色は、楽曲の切ない世界観を見事に引き立てています。

さらに、彼の活動の幅広さを象徴するのが、1969年の映画『真夜中のカウボーイ』のテーマ曲です。切なく胸を打つあのハーモニカのメロディー(演奏)は、彼の代表作の一つとなっています。この映画で主演を務めたダスティン・ホフマンは、映画『卒業』でトップスターの仲間入りを果たしており、その『卒業』のテーマ曲や挿入歌をサイモン&ガーファンクルが担当していたという点でも、不思議な縁を感じさせますね。

また、トゥーツの演奏は日本のテレビCMでも広く親しまれました。東京ガスや大手ビール会社のCMなどで彼の温かい音色が流れたことがきっかけとなり、日本で親しみを込めて「ハーモニカおじさん」と呼ばれるようになりました。

補足:トゥーツ・シールマンスと共演した主なレジェンドたち

彼がいかにジャンルを超えて世界中のトップミュージシャンから引っ張りだこだったかが分かります。

  • ジャズ巨匠

    • クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)

    • ビル・エヴァンス(Bill Evans)

    • エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)

    • オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)

    • ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)

    • チャーリー・パーカー(Charlie Parker)

  • ポップス / ロック

    • ポール・サイモン(Paul Simon)

    • ジョン・レノン(John Lennon / ビートルズ初期にトゥーツのリッケンバッカーギターに影響を受けた逸話も有名)

    • ビリー・ジョエル(Billy Joel / 『Leave a Tender Moment Alone』でハーモニカを演奏)

    • スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)

  • ボサノバ / ブラジル音楽

    • アントニオ・カルロス・ジョビン(Antônio Carlos Jobim)

    • エリス・レジーナ(Elis Regina)

    • イヴァン・リンス(Ivan Lins)

※トゥーツ・シールマンスには及びませんが、ボサノバと口笛の音楽動画を作ったので興味のある方はご覧ください。



 ヒット曲には覚えやすいメロディーや心を打つ歌詞など様々な要素がありますが、中には単調なリズムの曲もあります。つまり、シンプルなリズムで聴き飽きてしまいそうな曲でも、大ヒットにつながることがあるのです。

その代表格として挙げられるのが、アメリカのバンド「アメリカ」による『名前のない馬(A Horse with No Name)』(1972年)でしょう。リズムは単調で歌詞も情景描写が中心ですが、全米1位という大ヒットを記録しています。当時の日本では総合チャート上位に入るような記録はありませんでしたが、洋楽ファンの間では非常に人気の高い名曲です。

80年代にも、こうしたシンプルな曲が大ヒットしています。ユーリズミックスの『スウィート・ドリームス(Sweet Dreams (Are Made of This))』も、1983年に全米1位を獲得しました。あまりにもリフレインが単調なため、当時は「お経のようだ」と評した人もいたほどでした。

ユーリズミックスにはヒット曲が多く、1985年の『ゼア・マスト・ビー・アン・エンジェル(There Must Be an Angel (Playing with My Heart))』も全英1位を記録しています。こちらはメロディアスで曲の冒頭から惹きつけられるナンバーです。日本のTVドラマやCMなどでもよく使われていたため、聞き覚えがある人も多いでしょう。スティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加していることでも有名です。

また1984年には、ジョージ・オーウェル原作の映画『1984』が公開され、ユーリズミックスが手がけた『1984のテーマ(Sexcrime (Nineteen Eighty-Four))』がヒットしました。しかし、これは映画監督の意向に添わなかったようで、公開バージョンによっては彼らの曲が使われていないケースもありました。

個人的に「究極の単調な曲」として強く記憶に残っているのが、ホット・レッグスの『ネアンデルタール・マン(Neanderthal Man)』です。メロディーもリズムも歌詞もひたすら単調で、まさにタイトル通りの原始的な泥臭さがあり、聴いた当時は大きな衝撃を受けました。なお、ホット・レッグスのメンバーが中心となって結成されたのが「10cc」です。彼らは後に、全英1位・全米2位を獲得した大名曲『アイム・ノット・イン・ラブ(I'm Not in Love)』を発表することになります。

『アイム・ノット・イン・ラブ』の歌詞は「本当は恋しているのに、それを強がって否定する」というあまのじゃくな内容です。『ネアンデルタール・マン』も実験的な作品でしたが、『アイム・ノット・イン・ラブ』でも、アナログ時代に3人分の声で13音の音階をそれぞれ16回重ね合わせ、テープの端と端をつないで無限ループのコーラスパートを作るという、狂気とも言える途方もないレコーディングを行っています。まさに「肉声によるシンセサイザー」と言えるでしょう。

一口にヒット曲と言ってもヒットの理由は様々であり、中にはこうした実験的な試みや偶然の産物から生まれた名曲もある点が非常に興味深いですね。

※何も考えずにうまくいくこともあります。特にワークアウトはひたすら続けることだけを考えるとうまくいくかも。



2026年10月6日火曜日


爽やかに目覚めた朝には、その気分にふさわしい曲を聞くことで朝のルーティンも楽しく過ごせます。60〜80年代には、朝にふさわしい数々の名曲がヒットしました。

60年代のザ・ビートルズには「Good Morning Good Morning('67)」があります。ニワトリの鳴き声から始まる軽快で実験的なロックですが、朝の慌ただしい雰囲気を表現したヒット曲です。 ミュージカル「ヘアー」の中で歌われていた「Good Morning Starshine('69)」は、オリバーによるカバーが大ヒットしました。明るい朝にぴったりの曲です。 個人的にも好きなキャット・スティーブンスには「Morning Has Broken('71)」という曲があります。讃美歌のような神聖なイメージを持つ、ピアノをバックにしたフォークソングです。

タイトルに朝はありませんが、スーパートランプの「Breakfast in America('79)」も大ヒットしました。大好きなイギリスのバンドの一つで、特徴的なボーカルに惹かれていました。 フリートウッド・マックもイギリスのバンドですが、お金がない中高生時代にレコード店で「English Rose」のジャケットを見て、身長が2mもありそうなメンバーの写真にびっくりした記憶があります。フリートウッド・マックにも朝の曲があり、「Monday Morning('75)」が収録されているアルバム「Fleetwood Mac(白いアルバム)」は大ヒットしています。 

モーリン・マクガヴァンが歌った映画「ポセイドン・アドベンチャー」の主題歌「The Morning After('73)」も大ヒットしました。この頃はパニック映画と呼ばれる大規模な特撮を使ったハリウッド映画がヒットした時代でもあります。高層ビルが手抜き工事で大火災になる「タワリング・インフェルノ」もその一つです。 「ポセイドン・アドベンチャー」は豪華客船が上下逆さまになって沈没する中で脱出を試みる映画で、無事脱出した朝のシーンでこの曲が流れます。

80年代では、シーナ・イーストンの「Morning Train (Nine to Five)」('80)が全米1位を獲得しています。

朝の音楽というと穏やかで落ち着いた雰囲気の曲が多いのかと思っていましたが、ヒット曲だけでも様々な曲調がありバラエティに富んでいます。

前述のヒット曲以外にも朝のイメージに合った曲を以下に紹介しておきます。気になる曲があったらぜひ一度聴いてみてください。

  • Simon & Garfunkel - 「The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」('66)

朝の爽やかな気分や、新しい一日の始まりのウキウキした高揚感を思わせる軽快なアコースティックナンバーです。
  • The Kinks - 「Sunny Afternoon」('66)
厳密には「午後の日差し」の曲ですが、のんびりとした朝のティータイムやくつろぎのひとときに寄り添う、英国らしい乾いたユーモアと心地よいメロディが魅力です。

  • Daryl Hall & John Oates - 「Everytime You Go Away」(※朝の曲ではありませんが80年代の定番) / 代わりに朝をテーマにした曲として George Benson - 「Morning Dance」('79)(スパイロ・ジャイラのカバーでも有名)
スムーズジャズやフュージョン寄りの爽快なインストゥルメンタルで、きらめく朝の光や朝のドライブにぴったりのナンバーです。